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東京都防衛協会は、防衛意識の普及高揚を図るとともに、自衛隊を激励支援してその充実発展を助長し、わが国の平和と繁栄に寄与することを目的とした民間の組織です。

TEL. 03-6280-8427

〒162-0844東京都新宿区市谷八幡町13東京洋服会館9階

防衛参考(防衛サロン)防衛私観・防衛サロン・投稿

●平成28年7月1日から、東京都防衛協会は、全国防衛協会会報から独立して「東京都防衛協会会報」を発刊しています。各地区協会に係わる記事は、それぞれの地区紹介各ページに掲載し、ています。
●防衛協会会報の東京都関連記事記事を、会報の号ごとに掲載しています。なお、各協会に関連する記事は、地区紹介ページにも併せて掲載しています。

平成29年 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年
令和4年 令和5年      
 
令和5年 第30号(05.10.01) ●防衛サロン(「人間の意識・行動は変化するのか」)
第29号(05.07.01) ●防衛サロン(「個人の多様性の尊重と組織要求とのはざまで」)
第28号(05.04.01) ●防衛サロン(PKO撤収後の国造り支援)
令和4年 第26号(04.10.01) ●防衛サロン(ウクライナ戦争に見る認知領域の戦いについて)
第25号(04.07.01) ●防衛サロン(国防と教育)
第24号(04.04.01) ●防衛サロン(コロナ禍における自衛隊の運用と課題)
令和3年 第22号(03.10.01) ●防衛サロン(東京2020・五輪オリンピックを終えて)
第21号(03.07.01) ●防衛サロン(「防衛の礎」つれづれと つらつらと)
第20号(03.04.01) ●防衛サロン(「新たな生活様式」における架け橋)
令和2年 第18号(02.10.01) ●防衛サロン(「自ら国を守る」意識情勢の機運)
第17号(02.07.01) ●防衛サロン(海の向こう側で見える事)
第16号(02.04.01) ●防衛サロン(桜戦士の神髄)
令和元年 第14号(01.10.01) ●防衛サロン(平和を守る戦いに殉ず)
●特別寄稿(令和元年度北方四島交流事業に参加して)
第13号(01.07.01) ●防衛サロン
第12号(31.04.01) ●防衛サロン(最近の中国軍の動向について)
平成30年 第10号(30.10.01) ●防衛サロン(矛盾)
平成29年 第 6号(29.10.01) ●投稿(ありがとう、自衛隊!)
第 5号(29.07.01) ●防衛私観(北方領土を考える)
令和5年
防衛サロン
「人間の意識・行動は変化するのか」
ーアルビントフラーの第三の波ー
東京都防衛協会会報第30号(05.10.01)掲載

東京都防衛協会 常任理事 小川清史
 米国の未来学者アルビントフラーが「第三の波」を世に送り出したのが1980年です。その著書の中でトフラーは、「第一の波が農業社会、第二の波が産業・工業社会、そして第三の波が情報化社会である」と定義しています。
 農業社会は、農業を営む土地が中心であり各地域のリーダーが支配する社会です。次の産業・工業社会は、都市部などに大規模な会社、工場などが建設され、そのために都市部に人口が集中する社会であり、組織ごとにヒエラルキーを形成する社会です。
 この第二の波の社会は日本にとってきわめて有利な社会だったかもしれません。その社会は大規模な労働力集約型で画一的な製品を生み出す産業社会であり、その波の中で日本は高度経済成長を実現しました。その背景として、故中根千枝東京大学名誉教授が「日本は先輩後輩の関係が強い小集団が全ての基礎である。各集団は閉鎖性が極めて強く、大集団はこの小集団のタテへの数珠つなぎから構成されている」とのことです。こうした集団は年功序列、終身雇用の制度下、小集団内で滅私奉公に近い労働で生産性を上げる競争社会では極めて有利に機能したと考えられます。
 しかし、最近の日本ではそのような大規模労働力集約型、年功序列、終身雇用、先輩・後輩の強い関係などの価値観等がいずれも変化しているのではないでしょうか。これは、第三の波の情報化社会へ日本全体が移行しつつある兆候であると感じます。
 第二の波の大規模組織では上部組織も巨大でその意思決定は不透明であり、個人よりも会社優先の価値観が横行し、転職することは個人のキャリア形成には不利である、などのデメリットがあると言えるでしょう。大規模組織のメリットは安定ですが、その安定に頼る価値観は既に揺らいでいると思えます。
 第三の波の社会では、ネットなどの各種情報が個人でも容易に手に入りますので、そうした情報に基づき個人個人はより迅速に状況判断ができます。そのため、大規模かつ労働集約型の時間のかかるシステムでは有利な競争が出来なくなります。個人が必然的に尊重されます。新しい第三の波の組織では、上から言われたことだけを忠実に実行する人材よりも、自ら情報を収集し判断し実行する人材が求められます。そして、こうした個人は終身雇用の安定よりもスキルを活かして転職することを選択するでしょう。
 第二の波の社会では、大規模組織の中で上司のお気に入りになる事、ライバルとの競争に勝つ努力等が出世には大いに必要とされたかもしれませんが、第三の波の社会では個人のスキルアップこそが最も重要です。人間の行動原理が変化するには ①絶大なカリスマリーダーの影響、 ②長期間に及ぶ文化的変化の影響、 ③徹底した教育などが必要と言われています。これからは③を重視し、時代の波を自覚して自ら学ぶとともに、より良い教育機会を手に入れることなどが大変重要であると思います。
 これ等は自衛隊、民間会社、官公庁、政治の世界、いずれの組織においても求められる変化ではないでしょうか。
防衛サロン
「個人の多様性の尊重と組織要求とのはざまで」
東京都防衛協会会報第29号(05.07.01)掲載

東京都防衛協会 特別会員
(株)セーフティネット 代表取締役社長 新村達也
はじめに  
 海上自衛隊出身の山﨑敦(元海将補)がメンタルヘルスサービスを提供する会社として創業以来20年以上が経ちます。
 山﨑は、現役時代3名の部下を自殺で失うという悲しい経験から、「人を助けたい」、「自殺者をなくしたい」という想いを胸に、この会社の創業に踏み切りました。私は、その想いを受け継ぎ「はたらくに寄りそう」を社是として経営に携わっております。
 これまで、公共機関や企業で働く方々からの相談窓口として、カウンセリングや各種研修等を行ってきました。また、防衛省様、経済産業省様、地方自治体様等からの委託を受け、公務員や一般市民の方のメンタルヘルス対策にも貢献しております。
 東京都防衛協会の会員様及び自衛隊の部隊・機関の関係者の皆様に、最近の企業従業員のメンタルヘルス事情などをご紹介し、企業及び自衛隊の部隊における職場改善活動の一助にして頂ければ幸甚に存じます。

メンタルヘルス対策 なぜ必要か
 現代は、多様性の時代です。企業主としては、多様な能力・価値観を持った個人をどのように組織的にまとめ、経営目標を達成していくかが課題です。
 かつて我が国は、社長の命令一下、一丸となってチームで働く事が美徳とされてきました。しかし、それはもう過去のものとなりつつあります。
 ご承知のように現代は、DX(デジタル化)による生産性向上が企業成長のカギになっています。社員の高齢化も進み、年齢幅は団塊の世代からZ世代(一般に1996年~2012年に生まれた方)まで幅広く、働き方も多様な雇用形態になっています。この中にあって、職場のコミュニケーションを図ることは難しく、昨今のコロナ禍はこれに拍車をかけています。
 その他にも企業は、個人の要求と企業の要求とのミスマッチ、人間関係から生じるハラスメント、そしてDXの急進などに伴うメンタル不調者の存在などに悩まされています。
 その解決のために政府としても、ストレスチェック、健康経営、パワハラ防止法の施行など数々の施策を打ち出し、働き方改革の刷新を図っています。
 これらの施策に沿った職場環境改善に取り組むことは、従業員のワークエンゲージメント(働きがいや充実感)の向上や職場定着率の向上のみならず、人材獲得上の必須事項になっています。

自衛隊と一般社会に共通するもの
 自衛隊は、有事において身を投じることを求められるため、高い規律心と強いヒエラルキーによる強制力が求められます。しかし、このことが時としてパワハラなどに繋がりかねない危険性もはらんでいます。
 一方、社会的風潮は個人の多様性が尊重され、個人の要求が強くなってきていることもあり、自衛隊内のハラスメント案件が表面化しているようにも感じます。また、自衛官は使命感、責任感が強いが故に、自殺率が高いとも伺っています。
 メンタルヘルスサービスを提供して感じますことは、個人の不安や悩みも現代の多様性を象徴するかのように様々であります。このような時代においても、企業は組織としての業績の向上を、自衛隊は組織の強さを保つことが求められます。
 どちらも、組織として個人の要求を認識し考慮するばかりではなく、個人の不安や悩みを当事者自身が主体的に解決出来るように支援することが共通的に必要であると思います。
 この時代、個人の多様性を尊重しつつ、如何に組織として業績を向上するか、という極めて難しい課題を解決していくことが、日本社会全体に求められていると思います。そのような時代性を強く感じながら、働く人を応援したいと思っています。
防衛サロン
PKO撤収後の国造り支援
東京都防衛協会会報第28号(05.04.01)掲載

元東京都防衛協会常任理事
特定非営利活動法人 日本地雷処理・復興支援センター 理事長 湖 﨑 隆
 東京都防衛協会の皆様には、自衛隊に対する深いご理解と温かいご支援を賜り、心から敬意を表します。
 私は、数年前まで東京都防衛協会で常任理事を務めさせて頂き、現在は特定非営利活動法人日本地雷処理・復興支援センター(JDRAC)で理事長を拝命しています元陸上自衛官の湖﨑隆と申します。この度、会報誌への投稿の機会を与えて頂き、誠にありがとうございます。
 JDRACは、2002年にPKOとして東ティモールに派遣された陸上自衛隊の国造り支援活動を引き継ぐ為、自衛官OBが中心となって2003年に設立されました。
 PKOの終了に伴い、東ティモールに譲渡された各種器資材を現地の人達の手で操作や維持管理ができるよう、これまで約20年間にわたり日本政府外務省の行う無償資金協力事業として行ってきました。活動内容は仮設住宅の構築、不発弾の処理、大型自動車・建設機械の操作及び整備等です。
 また、昨年度からは国際交流の促進に寄与するため、留学生受け入れ事業を始めました。昨年度は、北欧及びオーストラリアから9名の高校生を日本各地の高校に受け入れました。各学生は、現地に溶け込み、勉強だけでなく課外活動にも積極的に参加し、著しい成長を遂げて無事帰国致しました。事業2年目となる今年度は、北欧、オーストラリア及びドイツからの留学生を受け入れることにしています。
 将来的には、発展途上国の高校生を受け入れると共に日本の高校生を海外の高校に派遣し、留学生の交流事業として発展させたいと思っています。
 更には、途上国の生産者を支援するため、フェアトレード事業を新たに立ち上げました。東ティモール名産のコーヒーを販売する事業ですが、少しでも売り上げに貢献できればと思っております。
 さて、今年はJDRAC創立20周年の年になります。世界には私達の支援を必要としている国が数多くあります。アサヒビール元社長の樋口廣太郎氏が残した「前例がない、だからやる」という有名な言葉がありますが、今後とも旺盛なチャレンジ精神を持って、いろんなことに取り組んでいきたいと考えております。
 どうか東京都防衛協会の皆様のご入会並びにご支援を心からお願い申し上げます。

JDRACアクセスQRコード

現地教育の様子
令和4年
防衛サロン
ウクライナ戦争に見る認知領域の戦いについて
東京都防衛協会会報第26号(04.10.01)掲載

東京都防衛協会 常任理事 岸川 公彦
 ロシアによるウクライナ侵攻が開始された頃、「ロシアはハイブリッド戦を遂行している」という報道を良く耳にした。「ハイブリッド戦」とは、「政治的目的を達成するために、軍事的な手段だけでなく、政治、経済、外交やさらには情報戦、心理戦などの様々な手段を組み合わせて行う戦争の手法」と言われている。そしてこの「ハイブリッド戦」において、核心的な役割を担っているのが、「認知領域の戦い」(以下「認知戦」)であろう。「認知戦」とは、人間の脳の「認知」に影響を与え、その「意志」に影響を及ぼし、戦略的に有利な環境を作り、状況によっては戦うことなく戦勝を獲得しようとする戦い方であると言われている。
 この「ハイブリッド戦」は、2014年のウクライナ紛争においてロシアが行ったことが明らかになっている。NATОの分析レポートによると、ロシアは、侵攻の数年前からウクライナの情報・通信インフラ等において周到な準備を行うとともに、正体不明の部隊による侵攻と前後し、サイバー攻撃や電子戦攻撃等により、ウクライナ国内の指揮・通信能力を無力化し、その軍事組織と国民の認知領域に対し大きな影響を与え、物理的な軍事行動をほとんど行うことなく、約3日間でクリミアを併合するに至ったと分析されている。まさに「21世紀の新しい戦争」と言われる「ハイブリッド戦」が成功した好例と言える。
 では、今回のウクライナ戦争では、ロシアの「ハイブリッド戦」はどうだったのだろうか。その特徴が顕著に表れた作戦初期の「認知戦」を焦点に見てみたい。未だその成否を断定的に評価することは、時期尚早かもしれないが、少なくとも2014年のように上手くは事が運ばなかったように思われる。
 その背景として、一つは、「米国による積極的な情報の開示による抑止」があったと言われている。「開示による抑止」(Deterrence by disclosure)として、報道等において紹介されているもので、一例をあげれば、ロシアの侵攻開始前の2月18日、バイデン米大統領が、「侵攻は数日中にもある。プーチン大統領は侵攻を決断したと確信している」と発言するなど、多くの機密情報と思われる情報が意図的に開示されている。これらの機密情報の開示は、結果としてロシアの侵攻を抑止できなったという指摘もできるが、ロシアを非難・牽制するという意味において十分効果があったと評価することもできる。
 二つ目は、ウクライナ、特にゼレンスキー大統領自らによるSNS等を活用した積極的な情報の発信が指摘されている。ロシアの侵攻開始直後の2月25日、首都キーウからゼレンスキー大統領は、「私たちはまだここにいる。ウクライナを守る」とのメッセージを自撮動画で配信し、国を守る固い決意を全世界に発信した。また、4月4日には、ゼレンスキー大統領は、ロシア軍の撤退後に多数の遺体が発見されたブチャを視察し、国際社会に対してロシア軍による「ジェノサイド(集団殺害)」を認定するよう訴え、一気に国際社会世論を味方につけた。これらのウクライナによる戦略的な情報の発信によって、ウクライナの国内世論を味方につけただけでなく、国際社会の支持の獲得にも成功したと言われている。
 他方で、ウクライナ戦争が開始以降、既に半年が経過した現在、国際社会のウクライナ戦争への関心も少しずつ薄れつつあるように思われる。このように、認知領域において、影響を維持することは、影響自体の良否にかかわらず、極めて困難であるとの指摘もある。  以上、ウクライナ戦争初期の「認知戦」を焦点に、その特徴等について紹介した。ウクライナ戦争は、IОT等が発達した現代において、戦略的に情報を発信し、人々の「認知」に影響を及ぼし、自国世論や国際世論の支持を獲得することの重要性を示していると思われる。米中の戦略的競争が台湾をめぐって一層緊迫化をます中、民意によって国内政治が揺れ、対外政策の一貫性に欠ける傾向にある我が国にとって、今回のウクライナ戦争における「認知戦」から学ぶべきものが多くあるよ。
防衛サロン
国防と教育
東京都防衛協会会報第25号(04.07.01)掲載

新宿区防衛協会会員
タカハタプレシジョン株式会社 代表取締役社長 山本康雄
 先日(4月末日)都庁前にある平和祈念展示資料館を訪れ、特攻を目前に控えた特攻隊員たちの家族に宛てた手紙や手記を拝読しました。目を潤ませずにはいられませんでした。
 それと同時に「我々は日本人として何か大切なものを忘れてはいまいか? 過去に置き去りにして来てはいまいか?」という思いがこみ上げて参りました。
 それは何なのか突き詰めて考えていくうちに「教育」というテーマに行きつきました。我々国民は防衛(国防)における教育の大事な役割を再認識し、国政に訴えていかねばならないという思いを強くしました。
 昨今、ウクライナ情勢に関する識者たちの発言の中に違和感を覚えざるを得ないものが散見されます。平和を願う気持ちは私にもあります。しかし「平和のためであれば降伏を」という考えは如何なものか。
 平和の意味を考えたとき、生きてさえいればそれでいいのでしょうか。自由が無くても生きてさえいれればそれでよいというのが我々の望む平和なのでしょうか。
 また日米同盟に関しても他力本願的な考えが多くの国民を支配しているように思います。
 勿論同盟は大事です。しかし、基本は「自分の身(自国)は自分(自国)で守る」です。平和は人から与えられるものではなく、自ら手に入れるものです。そのために戦うことは悪いことなのでしょうか。
 戦後の米国主導のWGIPが見事に浸透したお蔭で日本人は「矜持」というものを置き去りにしてきてしまいました。 こういった平和の意味や日本人としての矜持などは、まさに小中高生の頃から教育を通して理解させて身に着けさせるべきものです。
 18歳から選挙権を持ちます。教育を通してこれから日本を背負っていく若者たちを正しく導けば、10年後には大きなうねりとなるでしょう。国民の意識改革のために教育を見直す必要があると思います。
 平和や矜持といった概念のみならず、憲法等についても部分的でよいので具体的に中高生に教えるのもよいかもしれません。
 例えば前文「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して我らの安全と生存を保持しようと決意した」ですが、世界には公正と信義を信頼できない国々があることを教えなければなりません。国家が成立するための3要素「領土、国民、主権」について理解を深めさせて、領土に対する意識を高め、主権の意味を考えさせることも教育の大事な役割だと思います。
 歴史教育について言えば、特に近現代史ですが、自虐的史観から脱却すべく記述内容を真実に基づいた正しいものに改定せねばなりませんが、依然として高等学校の日本史教科書のほとんどが以前のままです。
 言葉(日本語)についても然りです。英語教育は勿論大切ですが、まずは日本語を、そして日本語による読解力をしっかり身に着けさせることが優先だと思います。
 日本の言葉、歴史、文化の素晴らしさや理解を説き、若者たちが自国に対する誇りが持てるようにすることが肝要だと思います。
 スイスでは永世中立国であるにもかかわらず国防軍を持ち、万一に備えています。そして国民は自国を愛し、誇りに思い、兵隊さんたちは国民から尊敬されています。
 一方、日本はどうでしょうか。  教育の責任は重大です。
防衛サロン
コロナ禍における自衛隊の運用と課題
東京都防衛協会会報第24号(04.04.01)掲載

東京都防衛協会 常任理事 吉田浩介
 新型コロナウイルスは2年前に中国武漢で発生し、数か月のうちに我が国を含む全世界に感染が拡大しました。新型コロナウイルスとの闘いは既に3年目に入りました。この間、防衛省・自衛隊は様々な場面において重要な役割を果たしてくれました。防衛省統合幕僚監部のホームページには、これまで自衛隊が行ったコロナ感染症に係る活動が集約されています。
 我が国には過去の感染症の経験から感染症対策は存在していたものの、今次コロナウイルスとの闘いではそれが十分に機能せず、一部の地域にあっては医療態勢が崩壊し、救える命が救えない事態に陥りました。そのような状況の中、防衛省・自衛隊は自主派遣を含む災害派遣という形でクルーズ船やホテル等施設に隔離された人々に対する生活支援、クルーズ船から医療機関への輸送支援等、医療支援のみならず様々な活動を行うこととなったのです。私はこのような防衛省・自衛隊が行った活動を否定するつもりは全くなく、逆に褒め称える必要があると考えています。
 しかしながら、これまで自衛隊が担ってきた業務は自衛隊でなければできない、あるいは自衛隊がやらなければならない業務だったとは思えません。担当する部署が不明確である、あるいは担当すべき部署にその能力が無いなど、緊急性から防衛省・自衛隊が引き受けざるを得なかったというのが実態だったと思っています。
 また、厳しさを増す我が国の安全保障環境を踏まえれば、自衛隊は我が国周辺の海・空域における警戒監視や領域の警備等の任務で精一杯であり、そのような活動を行う余力は防衛省・自衛隊には無いと思います。更には、日本には十分な能力や機能が存在しているにも関わらず、あたかも『何でも屋』のように様々な業務を任された隊員の士気が上がったとは思えません。
 日本の医療は世界において高い水準にあると言われていますが、医療資源の約8割が民間に存在しています。感染症対応の主体である地方自治体の能力を高めるには偏在する医療資源の活用、即ち官民の連携が必要不可欠であり、その連携が不十分だったため医療崩壊に陥ったとされています。
 自衛隊は『最後の砦』という美辞麗句の下、感染症対応の主体である自治体の不備の穴埋めをさせられたと考えています。今からでも遅くはありません。今次コロナウイルス対応の教訓を活かし、自衛隊が主体的に対応しなければならないようなことが繰り返されないよう、また従事する自衛隊員が誇りを持てる業務を付与する等、将来も起こり得る感染症を見据えて早急な改善措置を講じる必要があります。
 加えて、ワクチン接種について、医療従事者や高齢者等は優先接種者に指定されましたが、自衛隊員(一部の自衛隊医療従事者を除く)は優先対象者に指定されませんでした。諸外国のように国防、治安、消防等社会生活・活動の基盤を提供する業務に従事する人々が優先接種者に指定される必要があると考えます。
*コロナ関連の自衛隊の活動情報は 、「防衛省・自衛隊のホットな情報」を参照してください。
令和3年
防衛サロン
東京2020オリンピックを終えて
東京都防衛協会会報第22号(03.10.01)掲載

自衛隊体育学校 学校長 陸将補 豊田 真
 東京都防衛協会の皆様の自衛隊体育学校に対する日頃からのご支援とご理解、また、今回の東京2020オリンピックでの盛大な応援に感謝申し上げます。4月以降のコロナ感染症の拡大により、オリンピック開催に対する悲観的な議論の広まる中で開催に尽力された方々にあらためて感謝を申し上げます。
 アスリートの望みは、極限まで鍛え上げた肉体と技術を、戦いの場において証明することであり、その意味において、世界最高峰の戦いの場であるオリンピックが開催されたことの意義は大きかったと考えています。
 今回の東京大会には、自衛隊体育学校から、1996年のアトランタ大会(全競技において国別代表制度を廃止)以降で最大となる17名の選手が参加するとともに、4種目5競技において過去最高となるメダル5つ(金3、銀1、銅1)を獲得することができました。選手とこれを支えるスタッフの頑張りは勿論ですが、体育学校が創設されて以来、60年にわたる関係者の地道な努力の積み重ねが結実したものと考えています。
 畳上の所作が多くの人に感銘を与えた柔道の濵田尚里選手は圧倒的な寝技により世界の頂点を掴みました。フェンシングの山田優選手はエペ団体チームのエースとしての責任を果たす安定した戦いにより金メダル獲得の原動力となりました。秘めた闘志のレスリング乙黒拓斗選手は初戦から強豪との戦いを制し続け、世界の頂点に上り詰めました。過酷な戦いを強いられたボクシングの並木月海選手は1m53㎝の小さな体で次々と大きな相手を倒し価値ある銅メダルを獲得しました。
 その他の全ての選手も、持てる力を余すことなく、世界最高峰の戦いの場でベストパフォーマンスを見せてくれたことを学校長として誇らしく思っています。また、自衛官アスリートが繰り広げた数々の戦いが、全国津々浦々及び海外において任務にあたる隊員や家族、そして防衛省・自衛隊を応援してくださる皆さんに届いたとしたら、こんな嬉しいことはありません。
 今大会はコロナ禍で多くの制約がありましたが、アーバンスポーツにおける若い世代の活躍や女性アスリートの躍進が目立つ大会でもありました。アスリートが生み出した多くのドラマは、スポーツの健全性をあらためて証明するとともに、今後さらに複雑化・多様化するであろう社会に対し、スポーツの可能性を感じさせてもくれました。
 東京大会が1年延期されたことにより、3年後にはパリ大会が開催されます。その試金石となるアジア大会は来年に迫るなど、既にパリへの道のりは始まっています。自衛隊体育学校としては今回の成果に満足することなく、時代の変化に対応しながら、皆様の期待に応え続けられるよう努力してまいります。変わらぬご支援ご協力をお願い申し上げます。
防衛サロン
「防衛の礎」つれづれと つらつらと
東京都防衛協会会報第21号(03.07.01)掲載

東京都防衛協会 特別会員 音楽家 つのだ☆ひろ
 言葉や活字の時代から、動画や耳から入る音が主流になった今の時代に、ひたすら体力・気力を高めて、何が来ても慌てず堂々とした立振る舞いが出来る若者達を育てているのが自衛隊である。その自衛隊も一昔前とは違って、被災地に駆け付けて人命を救う姿がテレビに映し出され、これ等の活動が多くの人から賞賛され、何か有った時の自衛隊の存在が大いなる安心を国民の心の中に育て占めた。
 しかし、自衛隊はただの災害救助部隊で無く、その本質は「国を防衛する為の軍である」という事。「有事の際には武器を取って戦う」という崇高な役割を背負っている事が重要な点である。普段から鍛えて無く、武器の使い方も知らない我々一般国民は実際には何も出来ないのが現実。そんな事も分からず自分勝手な意見を垂れ流す輩は、体験入隊でもしてみるといい。自分の無力さを痛感し、自衛隊の素晴らしさが理解出来る筈である。口先の言葉は実行に敵う訳が無いのである。
 私は過去に2回、武山駐屯地に有る少年工科学校(現在の陸上自衛隊高等工科学校)の卒業式典に出席する機会を得た。「起立」という号令に一糸乱れず立ち上がる様子は必見、体育館の床がその一瞬、ズンと沈み込んだ気がする程だった。初めて見た時は驚きと共に感動さえも覚えた。「まだまだ日本は大丈夫。いざとなったら自衛隊が居てくれる」と感じたのである。
 しかしながら、日本の法律では自衛隊は軍隊ではなく自衛の為の隊。攻撃を受けてからでないと反撃すら出来ず、誰かの命が失われてからで無いと武器の使用も認められない存在。このような法律は人命軽視そのものと感じてしまう。「死ぬ迄そこで待っておけ」と言うようなもの。ましてや体力・気力が旺盛で、どんなにきつい労働にも怯む事の無い訓練を受けた防人を簡単に死地に追いやる事は国家の損失である。更に軍隊であるべき自衛隊を「セルフディフェンスフォース」と言い換える事は国家の安全保障上の損失とも言える。しっかリとそして早急に法整備を進めないと危険な状態を長引かせる事になると思わざるを得ない。平和を維持するには相手にこちらを恐れさせる抑止力も重要である。
 我が国周辺には核弾頭搭載可能なミサイルを装備し、我が国に照準を合わせ、いつでも発射可能になっていると思える国が複数ある。逆に日本は長距離のミサイルすら持って無い状況である。一日も早く長射程の国産トマホークの完成を願わざるを得ない。
 尖閣諸島には武器搭載型の外国公船が我が国の排他的経済水域は元より、領海付近、時として領海中まで侵入して来ている。武装した敵に対して海上保安庁の巡視艇もある程度の武装はしているものの、その武器を殆ど使用せず放水ホースで相手に挑む海上保安官の苦悩は如何ばかりかと思わざるを得ない。これが世界の国々なら、コーストガードでもそれ相応の武器を積載して適切に使用するのが常識である。国境の警備は海上保安庁が遠く国境線付近まで丸腰に近い装備で出かけるのを止めて、法を整備した上で海上自衛隊が行うのが穏当だと思っている。
 世界中から最も安全な国と賞賛を受けている我が国が、この先もこのような国であり続けられるように、私つのだ☆ひろは「正しい事を正しく知り、国を守り、国益を考え、国民が一丸となって歩んで行くための教育や道徳の在り方を今一度見つめ直して、『防人の礎』を築く事への努力とその為の協力を惜しまず、今後の人生を歩んで行きたい」と思っている。
防衛サロン
「新たな生活様式」における架け橋
東京都防衛協会会報第20号(03.04.01)掲載

東京都防衛協会 理事長 武内誠一
 昨年のこの欄で、「桜戦士の神髄」と題し「和」について思いを伝えた時には、新型コロナウイルスの影響がここまで長引くとは思いませんでした。ワールドカップの熱狂を受けての国内ラグビーの盛り上がりを期待しておりましたが、練習すらままならぬ状況が続きました。
 この一年間、私たちの生活は大きく変わり、多くの場面で「対面」「接触」が難しくなりました。仕事ではテレワークが推奨され、営業活動すらオンラインに移行しています。多くの人が集まるイベントは開催が難しく、大人数での懇親会や旅行も自粛せざるを得ない状況です。
 これらの「新たな生活様式」は自衛隊も同様であり、記念日行事、定期演奏会等が中止もしくは規模縮小となり、部隊研修は受け入れてもらえない状況が続いています。また、自衛隊でもオンライン会議が多く実施されているようです。
 一方、ワクチンの接種が始まり治療薬も実用化されつつあり、多くの制約も徐々に解除されていくと思われます。しかし、新型コロナウイルスが終息したとしても、「新たな生活様式」の流れは止まることも逆流することもなく、より加速されると思われます。
 このような環境の中で、私たち防衛協会は「市民と自衛隊の架け橋」としての役割をどのように果たしていけばいいのでしょうか。 昨年5月、富士総火演は「非公開」で実施され、演習全般が「ライブ配信」されました。総火演のライブ配信は数年前から実施されておりましたが、今回初めて視聴いたしました。大変鮮明な画像で、隊員個々の動作や砲弾の破片効果まで観ることができ、スタンドから観るのとは違う楽しみ方ができました。
 自衛隊の理解のために「部隊研修」は重要です。「対面」「接触」がなくとも「現地研修」しなくとも自衛隊の理解が進む重要な手段があることを、総火演のライブ配信を観て確信いたしました。 今、防衛省、各幕、各部隊はHPを公開し動画を含む多くの情報を提供しています。タイムリーにそして軽易に情報を入手できるこれらの手段を大いに活用して、自衛隊を理解しあるいは自衛隊を応援することに取り組んでいきたいと思います。
 また、将来的には、オンラインでの防衛講話や自衛隊員との意見交換等も実施できればと思っております。そのためには、インターネット等を活用できる環境が必要です。当協会の全ての方がインターネットやオンラインの環境にあるわけではありません。特に年配の方にはややハードルが高いかも知れません。当協会は今までの手段を継続しながら、インターネットやオンラインを活用した通信・情報提供を逐次取り入れていくつもりです。皆さんと共に「新たな生活様式」に向けた第一歩を踏み出します。
令和2年
防衛サロン
「自ら国を守る」意識情勢の機運
東京都防衛協会会報第18号(02.10.01)掲載

東京都防衛協会特別会員 新宿区防衛協会副会長 大野髙裕
(早稲田大学理工学術院教授)
 私が亀田宏司様のご紹介で東京都防衛協会に個人会員として入会させていただきましたのは、昨年度ですのでまだ新参者です。にもかかわらずこのコーナーに執筆させていただく機会を賜りましたことに、心から感謝申し上げます。
 少し前までの私は「自ら国を守る」ことは当然のことと考え、心の中では自衛隊の皆さまが国民を守ってくださっていることに、敬意と感謝の念を抱き続けてきましたが、それを形で示すことができませんでした。
 戦後教育を受けた者たちにとって、国の防衛という話はタブーであり、防衛はアメリカの核の傘にお任せという感覚で生きてきました。マスコミの論調も国防=軍国主義のような扱いで、マスコミ自身による言論統制が今でも行われているように思えます。
 しかし、ここ数年で顕著となった東アジアの情勢、米中の抜き差しならない対立を目の当たりにすると、「安全と水はタダ同然」という日本的な考えが、もはや成り立たないことは誰の眼にも明確になっています。
 今さら手のひら返しのように、自衛隊の皆さまを頼りにするというのは虫が良すぎますが、今からでも遅くない、自衛隊の皆さまを私たちが精神的支柱となってお支えさせていただくことが、日本にとって本当に必要なことだと痛感しています。
 最近ではこちらから話を持ち掛けなくとも、私の周りの40代以降の子供を持った人たちは、自分の方から国を自らが守ることの重要性を語るようになってきました。そして貴会のことを話しますと喜んで入会してくれます。
 昨今の世界情勢を見て、自分の子供たち世代はどうなってしまうのだろうという強い危惧から、誰しもが国防のことを真剣に自分事として考え始める時代が到来したのだと思います。
 そういう意味でこれからの防衛協会の役割は極めて重要なものになると考えます。
 私も身近なところから、自ら国を守る意識と行動を採る市井に眠っている仲間を見つけ出して、共に防衛協会での活動を広げていく思いを強くしていますので、どうかよろしくお願いいたします。
防衛サロン
海の向こう側で見える事
東京都防衛協会会報第17号(02.07.01)掲載

東京都防衛協会特別会員 簱智 良久
(昭和産業グループ 代表取締役社長)
 私は今年の始めに仕事の為に、パラオ共和国に二度目の訪問をしました。
 平成天皇皇后両陛下がペリリュー島を中心とした大東亜戦争の戦没者御慰霊の為行幸啓された事で御承知の方も多いと思いますが、パラオ共和国はミクロネシア地域の島々からなる共和制国家で、1994年独立の親日国家です。
 親日の大きな理由として、第一次世界大戦の戦後処理をするパリ講和会議により、ドイツの植民地支配から我が日本の委任統治領となったのですが、我々の先達がドイツ時代には行われなかった学校や病院、道路等のインフラ整備や貨幣経済への移行を親身に行った事によります。
 この訪問時にレメンゲサウ大統領との謁見を戴く機会に恵まれましたが、我々日本人に対する敬意と尊敬の念がひしひしと伝わり、当時のパラオの人達に真摯な態度で臨まれた英霊となられた方々に、新たなる尊敬と敬意の念を強くしました。
 昭和の30年前後に産まれた方々は私を含めて、我日本の歴史を暗黒史としてしか学校では学んでいません。特に台湾や朝鮮半島での統治に関しては、児玉源太郎氏や後藤新平氏もまるで悪人となっています。
 歴史の解釈に於いては、その当時の社会環境や国際環境を抜きには判断が出来ません。残念乍ら全ては善ではありませんでしょうが、全て悪ではありません。
 当時の清国で化外の地とされていた台湾に於いて、上下水道や灌漑の整備、風土病の駆逐等、祖国の整備発展を削って迄成して来ました。
 現地の人達から搾取だけを目的ならば、台北や平城に帝国大学は創りません。現地の人達には教育は無用どころか、将来の禍根の芽を作ります。現地の人達を対等に扱い、人間性を尊重してその関係を築いて来たからこそ、今だに我々日本人に感謝の気持ちを持って頂いているのです。 
 今こそ我々の先達の成して来たことを確りと学び、日本国に誇りを持てる日本人として、日々の生活や行動をすると誓ったパラオ共和国への訪問でした。
防衛サロン
桜 戦 士 の 神 髄
東京都防衛協会会報第16号(02.04.01)掲載

東京都防衛協会理事長 武内誠一
 春、桜の季節です。昨年の秋ラグビーのW杯において、アイルランド、スコットランド等を破り初めてベスト8に入った日本代表たちの胸に咲いていたのも桜でした。
 その躍進の原動力となったのは、昨年の新語・流行語大賞にもなった「ワンチーム」であると、選手やコーチ陣もコメントしておりました。同時に「簡単にワンチームと口にしてほしくない」とも話しておりました。
 彼らは、家族、仕事、自分の夢など全てを犠牲にして、W杯の年だけでも240日に及ぶ合宿でのハードワークを経て、苦楽を共にしたからこそ「家族」になれた、「ワンチーム」になれたと語っておりました。
 そしてもう一つ印象に残ったことがあります。合宿中には、選手とコーチ陣の対立もあり、また選手同士のすれ違いもあった。しかし、その都度話し合いを重ね乗り越えていったそうです。「コミュニケーションが本当に大事だった」と述懐しておりました。「厳しい訓練」と「コミュニケーション」あっての「ワンチーム」だったのです。簡単にでき上がるものではなかった訳です。
 「和をもって貴しとなす」聖徳太子の十七条憲法の冒頭の言葉として有名な「和」というこの言葉は、日本人の精神を表す言葉としてよく引用されます。しかし、この「和」というものをただ単に、争いを避け、他に迎合することと捉えているいる方が多いような気がします。
 この「和」という言葉をもう少しひもとくと、「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」(論語)の言葉に行き着きます。孔子は、「和」と「同」を区別して考えています。つまり孔子における「和」は、相手に簡単に合わせることではなく、相手をよく理解し、互いの相違を認め合ったうえで調和することなのです。桜戦士は、この「和」を実践していたのです。
 また、相手をよく理解し互いの相違を認めあうためには、生まれた国も育った環境も文化も違う選手・コーチたちが互いに理解し認めることも重要な要素でした。正に「ダイバーシティ(多様性)」の実践です。 桜戦士たちは、大変な試練を経て、「和」を創り上げ「ビクトリー・ロード」を歌うことができました。桜戦士の言葉に改めて「和」の神髄を感じた次第です。
 自衛隊員たちもまた「和」を求められます。最前線から後方にわたり実に多くの役割を担う隊員が、平素の厳しい訓練を経て、他の隊員たちの役割を理解し尊重し、そして何よりも与えられた自分の職務を全うすることで任務達成に邁進する。そんな自衛隊員を誇りに思い、彼らが胸を張って活動できるよう「市民と自衛隊員のかけはし」としての役割を果たしていきたいと思います。  
(元陸自富士学校長)
平成31年/令和元年
防衛サロン
平 和 を 守 る 戦 い に 殉 ず
東京都防衛協会会報第14号(01.10.01)掲載
元陸自北部方面総監 千葉德次郎
 昨年十月六日、フィリピンで日米比共同訓練参加中の水陸機動団(佐世保市)所属の前原傑(すぐる)二等陸曹(38歳)が殉職されました。概要は、現地時間二日昼、訓練支援中のフィリピン人男性運転の車両がスービック海軍基地近くで大型車と衝突。食料調達任務で乗車中の自衛官二人が現地の病院に救急搬送され、中央輸送隊(横浜市)所属の男性一等陸曹は骨折の重傷を負ったが、その日に退院。前原二曹は意識不明の状態で治療を受けていたが、六日深夜に死亡が確認されたものです。
 皆さんは、「日本は、今現在、国を守るために戦っていますか?」という問いに、何と答えますか。私は、「戦っている真最中です。」と答えます。戦いというと、敵の攻撃を阻止し、或いは侵攻した敵を撃破するために撃ち合うことを思い浮かべますが、実務としての国の守りとは、引き金を引くだけではなく、相手に刀を抜かせず、引き金を引くスキを与えないことであり、平和な状態を維持することです。
 今、将棋の藤井聡太七段(17歳)の活躍が注目されています。彼が、14歳から数々の棋界記録を書き換えた時、先輩棋士たちが「藤井君にはスキがない。欠点がない。」と評しました。その言葉を聞いて、戦いに生きるプロというものは流石の言い方をすると感じたのは、「藤井君は強い。」と言わず、次の一手の余地、すなわちスキがないと表現したことです。
 国の守りも同じではないでしょうか。平和とは寝転がってのほほんとして得られるものではなく、国益を侵害するあらゆる脅威に対して、常日頃から国家機能を総動員して寸分のスキの無い備えを維持することにより得られるものです。国家間の相互依存が拡大深化した現在、どの国も一国では自国の安全を守ることはできません。『国家安全保障戦略』や『防衛計画の大綱』に示すように、先ずは我が国自身が主体的・自主的な努力で守り抜くという意思を示すとともに、日米同盟や各国との安全保障協力の強化により、国内外での抑止の態勢に万全を期すことが必要です。  新たな部隊を南西諸島に配置して一歩も譲らないという国民の決意を明示するなど、官民挙げて総合的な防衛体制を確立し、あるいは、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配等の普遍的価値観を共有する諸国と共同訓練を行うことは、平和を守る戦いの一端です。陸自隊員が海外訓練参加中に事故で亡くなったのは初めてですが、同僚達は仲間の死を乗り越えて任務を完遂し、抑止力強化に貢献しました。
 翻って、このように平時から「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって国民の負託に応える」隊員やその家族に対して、国民は相応の処遇を与えているでしょうか?憲法改正や恩給制度の復活も含めて、防衛協会など各協力団体のなお一層の奮起が期待されます。
 湾岸戦争の教訓でもあるように、平和とは祈りや金銭的貢献のみで得られるものではありません。一周忌を迎えられた故前原一曹(特別昇任)の殉職は、平和を守る戦いの礎であり、まさに戦死というべきでしょう。ご冥福を祈念申し上げます。(合掌) (東京都防衛協会常任理事)
特別寄稿
令和元年度北方四島交流事業に参加して
東京都防衛協会会報第14号(01.10.01)掲載

元海自・自衛艦隊司令官 海将 松下泰士
 この度、幸運にも機会を得て「令和元年度北方四島交流事業」に参加することになった。
 今回の研修で訪問したのは、色丹島と択捉島で、国後島には出入域手続きのため古釜布港沖に仮泊しただけだった。途中、急患の発生により最終日の日程が取り止められたが、天候に恵まれたことも幸いして総じて大いに実りあるものであった。
 7月4日(木)夕刻、根室において結団式及び事前研修会が実施された。事前研修会ではオリエンテーションが実施されたのち、択捉島出身の女性と北方領土問題に詳しいジャーナリストから講話があっ た。
 7月5日(金)朝、交流船「えとぴりか」に乗船し、根室市長等根室市民に見送られて根室港をあとにした。
 根室港を出港したその日の午後、国後島古釜布沖に投錨して国境警備隊員により入域手続きを受けた。簡易ではあるが実質的な入国手続きであり、屈辱的ではあった。この思いは、古釜布沖に至る前の通過点(4328N14546E)通過時に「えとぴりか」のメインマストに掲揚されたロシア国旗を見たときにも感じた。
 入域手続きを受けた同日夕刻、色丹島穴澗港外に投錨、翌7月6日(土)、早朝に抜錨して穴澗港の桟橋に係留した。初めて踏む北方領土である。
 上陸後ただちに最初の研修場所である水産加工場建設現場に徒歩にて向かった。その後、文化会館にて現地住民との交流プログラム等を経て、斜古丹に移動した。斜古丹では、85柱が眠っているという日本人墓地に参り、その近くにある学校等を見学したのち、数店ある商店を見て歩き土産少々を購入した。
 その後、旧ヘリポートに移動して斜古丹の街を鳥瞰し、穴澗に戻った。ここで地元のロシア人関係者と交流夕食会が催され、歌と踊りとウオッカで大いに盛り上がった。夕食会終了後は、穴澗港に移動し「えとぴりか」に乗船、択捉島に向かった。

商店(豊富な品揃えにビックリ!)
 7月7日(日)早朝、択捉島内岡(ナヨカ)沖に投錨、朝食後、2グループに分かれて艀にて上陸した。ここでは、紗那墓地の清掃・墓参、現地ロシア人との料理での交流、オダイバケ温泉見学及びホームビジットが行われた。  紗那墓地には、日本人330柱が埋葬されているほか、ロシア人も埋葬されている。ロシア人の墓地は鉄柵で囲われ、写真が焼き付けてられている墓標もあった。

ウクライナ人女性の    リードで踊る団員
 択捉島は、色丹島と異なり、かなり広範に道路は舗装されており、海岸沿いの高台を巡る道路に沿って遊歩道が整備されつつあるなど、投資の順は明らかに北海道から遠い順であることがよく分かる。
 北方領土では、すでに4世代に該当するロシア人が生活し続けており、更に投資が進んでいるだけではなく、ロシアが、択捉、国後に1個師団規模の兵力を置き対艦ミサイル部隊まで配備している状況下、この問題をどう我に有利に解決すればよいのかを考えると呆然としてしまう。
 一日早く根室に戻り、根室市内を1時間半ほどかけて歩いてみた。歩道はカートを引きづらいほど傷んでいた。新しい建築物はほとんどなく人通りもまばらだった。そこで思ったのは、先ずは道東の活性化の必要性だった。
 双方向の交流がなされていると聞く。ロシア人に魅力ある道東を見せる必要があるのではないか。サハリン経済圏より道東経済圏を選ぶようになる方策もいいのではないかと思った。

ダイニングキッチンで交流
(東京都防衛協会 常任理事)
防衛サロン
隗 よ り 始 め よ !
東京都防衛協会会報第13号(01.07.01)掲載

元陸自幹部学校長 西 浩德
 昨年の7月は記録的な大雨により、西日本を中心に大規模な河川の氾濫や土砂災害が多発し、広島、岡山、愛媛県など14府県で死者・行方不明者合わせて229名にのぼる最悪の豪雨災害となりました。この災害に対し自衛隊は、最大時33,100名、28隻の艦艇、38機の航空機を投入し、人命救助、給食・給水・入浴等支援、物資輸送や瓦礫の処理に当たりました。
 テレビ等の報道では、泥まみれになって懸命に活動する隊員の姿に賞賛の声が上がり、自衛隊に対する期待が一層高まりました。一方私は『災害派遣においては敵の弾が飛んでくるわけではない。どうか危険な目にあわないよう安全第一でやってくれ』と思っていました。
 言うまでもなく自衛隊の最も大事な任務は、「国防」です。このため自衛隊は、わが国に侵略する敵を撃退できるよう、平素は部隊・隊員の戦闘能力を高め、精強な状態に維持するために訓練をしています。これを通じ隊員は、戦場で生き残り、熾烈な火力戦闘で敵を撃破できる戦闘技術を身に付けるだけでなく、体力や気力、何よりも使命感や責任感を身に付けていくわけです。こうして鍛え上げられた隊員が、敵弾が飛んでこない災害派遣現場で活躍をするのは当然のことで、むしろ平素の厳しい訓練を積んでいなければ、災害派遣現場での活躍は期待できないかもしれません。
 災害現場で懸命に働く姿に国民は自衛隊に高い信頼を寄せていますが、自衛隊の最も重要な任務である「国防」のため日夜働いている姿には、さほど関心を寄せていません。自然の脅威と災害派遣は報道で見ることもあり想像できるが、我が国が侵略されるような事態は、映画の中でしか起こり得ないし、イメージアップしにくいからでしょう。中には憲法9条の問題もあり、考えたくもないという方も結構いらっしゃいますし、戦争になったら自衛隊にお願いすると、まるで他人事のような考え方をする人も散見されます。
 しかしながら我々が本当に関心を持つべきは「国防」であり、そして自衛隊で賞賛すべきは、生起するかさえも分からない各種事態に対し、日夜警戒活動にあたり、日々黙々と練成し、一朝有事になれば身の危険を顧みず国民の負託に応える覚悟を持って勤務し、「抑止」の一端を担っている隊員達だということをご理解いただきたいのです。
 平素精強な軍事力を持ちそれを鍛えることは、国家を戦争状態に陥れないようにすること、即ち相手に「抑止力」を効かせることであります。我が国に対する脅威は、相手国の意思と軍事力からなりますが、この意思を相手に持たせないことが極めて大事なのです。そのためには自衛隊が持つ軍事力のみならず国家の総力を抑止力の発揮にむけて機能させなければなりません。「抑止力」=「相手に耐え難い損害を与える軍事力」×「軍事力を運用する制度」×「国を守る国民の総意」と考えると、「国民を守る国民の総意」が1より小さいということは、極めて深刻な問題です。国防は、他人事ではありません。自分の国は自分で守る重要性をしっかりと認識し、自衛隊の活動を応援することこそが重要だと思います。 
 「隗より始めよ」と故事にあるが如く、先ずは我々からこの意識を持ちましょう。
(東京都防衛協会常任理事)
防衛サロン
最近の中国軍の動向について
東京都防衛協会会報第12号(31.4.1)掲載

佐 藤 ま さ ひ さ
( 外務副大臣 参議院議員 )
 「東京都防衛協会」の皆さん、いつも御世話になっております。
 日頃よりの皆様のご支援に心から感謝申し上げます。
 さて、昨年の年末から年始にかけて中国軍に関するニュースがいくつかありましたので、今回のコラムではそれらの報道について取り上げてみたいと思います。
 まず、驚いたのは、電磁レールガンが2025年にも中国艦艇に配備されるではないかとのニュース。電磁レールガンの弾丸の速度は音速の7.5倍で、射程距離も最長約200キロと言われています。火薬を使う従来の砲よりもコストが安く、米軍艦艇の5インチ砲の射程距離が約24キロであることを考えると、圧倒的な性能です。実際に配備されれば、戦場を根底から覆す「ゲームチェンジャー」となる兵器と言えます。
 同じく中国海軍の話題としては、新型の潜水艦発射弾道ミサイル「JL(巨浪)3」の発射実験を11月下旬に渤海湾で行ったとの報道もありました。発射実験では渤海から中国内陸の射場に向けてミサイルが発射されたようです。JL3の射程は9000~1万4000キロ前後とみられ、中国近海から米本土の全域を射程に収める可能性があります。
 さらに、通常兵器では最大の威力を持つ爆弾「大規模爆風爆弾(MOAB)」の中国版の実験が行われた様子が、中国国営の軍事企業のウェブサイトで公開されました。大型爆撃機H6Kから投下された大型爆弾が地上で爆発する映像でしたが、場所や日時などの詳細は不明でした。
 また、中国がロシアから購入した最新鋭の地対空ミサイルSー400の試射成功のニュースもありました。Sー400が中国の沿岸部に配備されれば、台湾を完全に射程圏内に捉えることから、台湾海峡の制空権を中国が取りにきているという姿勢はあきらかです。
 一連のニュースは、米国と貿易交渉を行っている中国が、「中国は米国に負けない」という対抗する意識を国内外に喧伝し、中露の軍事的な協力関係も国際的にアピールする目的があるものと考えられます。
 中国は「製造2025」という国家プロジェクトで、情報技術産業やロボット、航空宇宙、船舶産業、新材料、バイオ・医療など10大重点分野に集中投資し、建国100年を迎える2049年に「世界の製造強国の先頭グループ入り」を目指しています。
 民生分野のみならず軍事分野にも応用可能な技術も多いことから、米中の貿易摩擦の背景には、世界の技術覇権を狙う中国とそうはさせないという米国との覇権争いがあると見てよいでしょう。
(東京都防衛協会相談役)
平成30年
防衛サロン
矛 盾
東京都防衛協会会報第10号(30.10.1)掲載

特別会員 籏智 良久(昭和産業グループ 代表取締役社長)
 矛盾とは御承知の方も多いと思いますが、中国の楚の国の韓非子の故事にある一商人の購う矛と盾に倣った論理の整合性の無さを伝える諺です。詳細な意味等は紙面の関係上省かせて頂きますが、普段何気なく我々が使っている言葉の一つであると思います。
 矛とは主に攻撃に使用する武器で、盾は攻撃から守る事を主とした道具とした場合、現在の我々日本人が置かれた状況に鑑みると、世界第五・六位の軍事力を保持していながら、憲法上軍隊を持つ事に関しては不保持と明記されています。其の上交戦権の放棄と文字上の聞こえは良いのでしょうが、実際の戦闘・戦争行為にもハーグ条約やジュネーブ条約に制限が明記されており、それら各国が順守すべきルールを一方的に従わないと主張していると受け取られかねない文言になっております。 
 戦争の放棄といいましても、他国に侵略行為を行わないは是としても、侵略された時に一体誰が盾の役割を担うのでしょうか。日本国憲法は日本国に籍を置く者のみが順守を義務としているものです。他国の人に我々はこういった憲法を順守していますので判って下さいと頭を下げても、彼らには我が国の憲法になんら義務も持っていません。
 残念ながら我が国は地政学上まるで朝鮮半島やアジア大陸を蓋をするような位置に在しています。先日友人から頂いた沿海州や朝鮮半島から太平洋を見た地図を見ると、大陸側から見た我が国は正しく日露戦争の発端となった当時のロシアの不凍港の開設と、艦隊等が太平洋に出る思惑にとっては、目障りな蓋です。現在も海底資源の目的とハワイ以西を傍若無人に我が領海を目論む中華人民共和国の海洋進出にとっても、尖閣諸島・沖縄を始めとする我が国の領土は、目障りな蓋です。
 夫々の国には独自の文化と伝統が息づいており、それらを大切に国内の安定と成長を図りながらも、対他国とはお互いに文化と伝統を尊重しながら宥和及び共存を目指しています。そんな中、中華思想で東夷・南蛮・西戎・北狄とまるで世界の中心は自分達で、一切他の国に対して敬意も払わず独歩する国が極近隣に在しています。  盾も矛も持たず、国内で軍備や核の議論をすることにもヒステリックに反対を唱えていて、一体我が国の将来はどうなってしまうのでしょうか。
 外交とは武器を持たない戦争であり、戦争とは武器を持った外交であるとの故事もあります。 軍隊どころか国の根幹である憲法も独自のものを持たず、アメリカが何とかしてくれるだろうでは、悠久の歴史をもった我が国を守ろうと身命を賭した先達になんと顔向けができるのでしょうか。
 天は自ら助くる者を助くの言葉の様に、人任せの国に対してアメリカは絶対に自国の国民の血は流しません。我が国だって同じではないでしょうか。そんな状況下自衛隊員の方々は国防を担いながら、自らの身を削って災害派遣までこなして頂いております。
 一日も早く彼ら自衛隊員の方々に、我ら日本人全員が敬意と尊敬の眼差しを向けられるような日が来る事を念じ、拙文を閉じさせて頂きます。
東京都防衛協会会報第8号(30.4.1)掲載
平成29年
投稿 千代田・中央防衛協会 会員 秋田耕治郎
ありがとう、自衛隊!
東京都防衛協会会報第6号(29.10.1)掲載
 私の自衛隊に対する 想いの原点は、中学一 年生の時の経験にあり ます。私は昭和 36 年瀬 戸内海の小豆島で生ま れ、高校卒業までの 18 年間を島で過ごしまし た。
 その間に島は二度 の台風による大災害に 見舞われました。特に 無防備であった最初の 時は、人的被害も大き く、町が受けたダメー ジは壊滅的なものでし た。
 時は昭和 49 年7月6 日。午後から降り続い ていた台風8号による 雨は夜半より豪雨とな り島のあちこちで鉄砲 水となって民家に押しよせたのです。中でも 山あいの傾斜地にある 小さな集落では、避難 する間もなく多くの人 が土砂にのまれていき ました。

懸命の捜索
 行方不明者 29 人、負傷者多数、町の家屋の多くが倒壊もしくは床上 浸水という絶望的な状 況のなか、翌朝には自衛隊第一次派遣隊が到 着しました。彼らは、 炎天下、物資を運び、 生存者を救出し、行方不明者を懸命に捜索してくれました。跡形もなく流された家の住民を捜索するのは大変な作業です。自衛隊を中心とする捜索隊は行方不明者 29 人を全員見つけだし、そのご遺体を家族の元へ届けてくれたのです。その 中には、私と同級生の女の子二人も含まれていました。
 あれから40 余年。当時の自衛官の皆さんの多くは既に退官しておられるかと思いますが、 元島民の一人として、 この機会に、もう一度、 心を込めて申し上げた いと思います。 「ありがとう、自衛隊!」
防衛私観 東京都防衛協会常任理事 伊藤俊幸 
北方領土を考える
東京都防衛協会会報第5号(29.07.01)掲載
 北方領土は、二つの「宣言」で考えるべき問題だった。  一つは一九五六年の「日ソ共同宣言」。日ソは戦争状態を脱し、「平和条約締結」後「歯舞」「色丹」二島は返還されると合意された。しかし一九六〇年、日米安保条約改定に反発したソ連は、「平和条約締結」は「他国軍隊の日本からの撤退が条件」と言い出し、それ以降「日ソ間の領土問題は解決済」となってしまった。  
 もう一つは一九九三年、ソ連崩壊後の新生ロシアとの間で締結された「東京宣言」。 ここで六〇年以降のソ連の態度は否定され、五六年宣言の「平和条約締結」と「二島返還」が確認され、更に「領土問題」とは「択捉」「国後」も含めた「四島の帰属問題」と再定義された。
 よく「二島先行か」「四島一括か」と問題になるが、「四島『一括』」には言及していない、というのが日本政府のスタンスだ。重要なことは、戦後七〇年以上を経て、日露間に不可侵を約束する「平和条約」がないのは普通の状態ではないということだ。
  
国後島「友好の家」前の筆者      択捉島温泉           択捉島文化会館
 筆者は昨年九月十五日から「ビザなし交流」で「国後」「択捉」を訪問し、マスメディアを通じてではわからない本当の姿を垣間見る機会を得た。
 「択捉」は、道路の舗装は進みカラフルな建物が建ち、着実に「ロシア化」が進んでいる。現島民は二五年以上続く「ビザなし交流」の結果、日本・日本人のことは大好きで、一緒に生活しても良いと思っている。
 一方高齢になった元島民の方々も現島民とは顔見知りで、今や北方領土問題に対する要望の第一は「自由往来」で、「現島民と共同生活」しても良いという。七十年間何も動かなかったが、「今度こそ具体的に何とか動かしてほしい。」のだ。
 昨年十二月十六日、安倍総理とプーチン大統領は、平和条約締結に向けた「新しいアプローチ」を発表した。ポイントは、「北方四島での共同経済活動の実施に向けた協議の開始」「元島民の北方四島への自由往来の拡大」「八項目の経済協力計画の着実な実施」だ。 「またロシアに騙される」という意見もあるが、「経済協力計画」は、日露信頼醸成のため、ロシア本国で「民間企業」が行う枠組みだ。
 他方「共同経済活動」は、国境画定がなければ本来不可能な平和条約交渉だが、北方領土を「日露両国民が共存できる島」と位置づけ、“どちらの国の法律にも服さないで生活できる枠組みを考え出してみよう”、帰属をあえてあいまいにし、バッファーゾーンにしたままとする新たな試みだ。
  安全保障面から観るなら、オホーツク海は、米国との核戦争に備えたSLBM(第二撃能力)を隠し置くロシアの聖域だ。北方領土はこれを守る南端の島であり、残念ながら日本への返還は極めて困難だろう。
 「元島民の悲願」「複雑な安全保障環境」に加え、どんな結論であろうとも生じてしまう“反対勢力”という「政治的リスク」。北方領土は、現在の両国首脳のような「強い政権基盤」の時にしか解決できない問題であることは間違いない。
更新情報
01.07.01:会報13号記事掲載
01.01.01:会報14号記事掲載
02.01.30:区市町村HPリンク改善
02.04.01:会報16号記事掲載
02.07.01:会報17号記事掲載
02.10.01:会報18号記事掲載
03.04.01:会報20号記事掲載
03.07.01:会報21号記事掲載
03.10.01:会報22号記事掲載
04.04.01:会報24号記事掲載
04.07.01:会報25号記事掲載
04.10.01:会報26号記事掲載
05.04.01:会報28号記事掲載
05.07.01:会報29号記事掲載
05.10.01:会報30号記事掲載

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最終更新:05.07.01